陶芸家として、また食通として知られた北大路魯山人は、その著『魯山人味道』の中でこう語っています。「ふぐの美味しさというものは実に断然たるものだ――と、私は言い切る」。
その身の甘さ、陶然たる香り、歯ごたえから和食の食材として「抜群」とも「別格」とも賞される天然のとらふぐ。養殖ものをいれトラフグ全体の漁獲量は約6,000トンあるといわれ、このうち天然トラフグはその1割の600トン。この6割の360トンは遠州灘(静岡、愛知、三重県の海域)で獲れ、2002年には浜名湖の舞阪漁港で73トンが漁獲されています。
つまり、流通をしているふぐの9割が養殖で、天然ものはわずか1割しか水揚げをされていないのが現状といえます。
浜名湖や浜松と言えば「ウナギ」が思い浮かぶ人も多いかと思いますが、実は、浜名湖と接する遠州灘沖は、 日本有数の天然トラフグの産地(遠州灘沖で全国の6割が漁獲)でもあるということはあまり知られていない事実でした。
浜名湖は、海水と淡水が混じりあっている汽水湖として有名です。
このため棲息している魚の種類は700種類を超えると言われています。全国的に有名なウナギはもちろんキス、スズキ、サヨリ、アワビ、ワタリガニ、アユ、コチ、幻のカニと言われるドウマンガニも獲れます。
スッポンの漁獲量も日本一です。食材の豊さ、味はどこにも負けない資源を今まで十分に生かしきっていなかったわけです。
遠州灘沖で獲れ地元の舞阪港に水揚げされたフグの多くが下関へ陸送されていたということから、2002年から地元(浜松市)の温泉旅館やホテルなどが中心になって「遠州灘天然とらふぐ祭り」が開催されるようになりました。
昨年は不漁であったためにシーズン途中で販売中止になりましたが、今年の10月15日から3年目(第3回)を迎えることになりました。
天然ものは内臓に猛毒があるため、専門の資格を持った調理師でないとさばけません。
下関にはこの資格を持った調理師がいる専門の加工処理場が170軒もあり、ここで大量にさばいて全国に配送していました。
しかも下関ではすでに「地域ブランド」として確立していて、呼び方ひとつとっても「ふぐ=不具」と書くことから「ふく=福」とするなど、特産品としての位置づけにこだわりを感じます。
こうした中、地場料理として夏のウナギに続き、冬の天然トラフグを提供できないかというアイデアを実現するために「遠州灘ふぐ加工協同組合(代表新村祥一)」を設立したことが「遠州灘天然とらふぐ」ブランドの誕生を可能としました。
舘山寺内にある加工工場では、フグをさばくために専門の資格を持った調理師が「天然とらふぐ」を確保するために舞阪漁港を主とした地元漁港へ地元に提供してもらい、フグ漁の最盛期の10月から11月に安く仕入れ、一気に加工し、これ(皮はぎや毒のある内蔵の除去等の処理を行い、「身欠き」にしたもの)を真空パックにしてマイナス3度の保冷庫に保管します。
これによりふぐ加工組合に加盟している24施設(舘山寺温泉地区の16施設、弁天島地区の4施設、浜松地区の4施設)は必要な時に仕入れ、簡単な調理でお客様に安価で提供できることが可能となっています。
この「遠州灘天然とらふぐ」を浜松ブランド(浜名湖ブランド)として旗揚げし、普及活動の母体となっているのか「浜名湖えんため(環浜名湖の観光振興を考える会、稲葉大輔会長)」といわれる組織です。
この団体では、「天然とらふぐ」の本物の良さを地元で食べていただくために県内外でのプロモーションを行い、またふぐ料理に付き物である「あさつき(ネギの若芽)」も浜松市内の地元農家の方に特別に栽培していただき提供できるルートを確保するなど「地産地消」運動の先導役を担っていることで全国の注目を集めています。
最後に、料理の鉄人・道場六三郎さんもこんなコメントを残しています。
食べ物はどこでとれたものか、わかるとお客さんは喜びます。また、トラフグという食材は高級なものです。1年に1、2回は食べたいと思っている人は 多いですし、そういう人にとっては、天然ものを食べるいい機会になります。フグの食べ方の王道はなんといっても刺身です。いろいろこった料理もいいです が、行き着くところは刺身と鍋になるでしょうね。素材のいいものは、手をかけなくてもそのままでおいしい。本当のうまみをあじわっていただくには、シンプ ルが一番かもしれません。
お気軽にお問い合わせください。
コメント
http://wing.cocolog-nifty.com/wing/2005/10/post_f445.html
で引用させていただきました。
貴ブログでの引用ありがとうございました!確かに下関では「ふく」と呼んでいます。「ふぐ」は「不具」とも書くことで縁起悪いとされ、「ふく」としているそうですね。「ふく」を食べて「福」来るということですね…
いつまででしたっけ?
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