バイキング
私が敬愛するの井門隆夫さんの記事が胸に大きく響きます…

かつてJTBで活躍していた井門隆夫さん(ツーリズム・マーケティング研究所)が書く記事は、旅館業界のみならず旅行業界全体の歴史から未来に向けての警鐘まで、さまざまな角度から分析されていて、自分としてはいつも参考にしています。

今回はAll Aboutの「旅館料理の量が減らない理由」と題された配信メールを紹介したいと思います。

日本の宿・裏話 旅館料理の量が減らない理由
▽「私たちも量が多いと言われ、食べ残される料理は作りたくないのです。」シンポジウムでこう訴えていたのは、ある県の調理師会副会長さん。老舗温泉の名旅館の料理長さんです。
▽農林水産省が毎年実施している「食べ残し調査」でも、旅館は、婚礼産業の次いで、食べ残しの多い業種として名を連ねています。旅館業界では、今年、エコポイントを導入していくそうですが、無駄の多い使い捨てのアメニティに加えて、毎月何トンにもなる食品残渣をどうにかしない限り、「エコ」なんてお話にならないレベルだと思います。
▽こうまでして、なぜ「量ばかりの料理」を出し続けるのでしょうか。その背景にはいくつかの要因が見え隠れします。
▽まず、第一には、「ハレの日のお客様」は、食べきれないほどの量の料理で歓迎するというしきたりが各地に多いこと。おばあちゃんの家に行ってもそうですよね。客人には残すことを前提として出すという発想が日本の田舎には根づいているためです。
▽が、旅館の場合、お金を払っているのは、利用者です。残すほどの料理を出すおばあちゃんの「情」が、「理」にかなうでしょうか。私のように旅館によく泊まるケースはレアケースで、年に一泊の楽しみという方なら、食べきれない料理のほうが嬉しいと思うとも考えるのですが、それなら、少なくとも料理を選択できる仕組みを考えるべきだと思います。
▽第二には、他館より見栄えの良い料理(質は写真に写らないので結局は量)が営業面で要求されること。すなわち、旅行会社などのパンフレットの問題です。これは、旅行会社さんが、発想を変えていただかない限り変わりません。
▽そして、最大の理由は、旅館が「一室当たりの売上」の計算に「食事」も含めてしまっていること。通常、宿泊業の国際標準では、「一室当たり売上」は「部屋代」であって、食事なんて含みません。「部屋代」は飛行機の座席と同じく、需給バランスによって、上下します。一方で、「食事代」は、需給とは関係なく、かけた原価により上下します。
▽この性質の全く違う2つの料金を、ごちゃごちゃにしていることが不幸の始まり。常に「食事代金」が含まれているので、高く見えてしまいますし、部屋代が安くできる時期であっても「料理で稼ごう」としてしまい、結局、連泊需要や、旅館ルールのわからない外国人や、食事は街で食べたいという新しい需要を犠牲にしてしまっているのです。
▽なぜ、食事代を全員に課してまで、旅館は一室当たり売上を守ろうとするのか。その背景には、「季節・曜日により繁閑の激しい立地」という原因があります。つまり、稼働率を上げたくても、週末は稼げるけど、平日は稼げない。その結果、週末の客から、取れるだけ取りたいという思いになってしまうのです。
▽さらにその心理の奥には、旅館経営者は「日本の中小企業」なので、大企業の社長と違い、銀行借入に対して、個人保証や親族の連帯保証が求められるという事情があります。万一、資金繰りが回らなくなったら・・・。
▽自分の資産で借金を返せない場合、生命を持ってでも金を返せという国なので、旅館経営者の焦る気持ちも重々よくわかります。国際標準から逸脱しているのは、旅館料金ばかりでなく、生命まで担保にしないと小資本事業者は借入ができないという日本の金融事情もあるのです。この国では、ベンチャーが生まれるわけがありません。先進国で自殺率が突出して高いのも、ここに帰結します。
▽こうした背景を理解したうえで、皆さんが経営者なら、どうしますか?季節による資金繰りが安定すれば、よいのです。
▽日本の宿泊需要は、欧米のようにバカンスという制度のない、超「連休偏重」型。これでは、まず、旅館料理の量が少なくなることはありません。旅館料理改革のためには、まずは「季節・曜日の需要の平準化」が必要。平日だけでも、夕食なし予約を受け付けてみたり、地元の方に特典を付けたり、平日の回数券を作ってみたり、いろいろとアイディアはあるはずです。
▽あるいは、「早割」などを導入して、オフシーズンにオンシーズンの予約した方は、安く買えるなどの制度化を図るのも、資金繰り安定のため一考に値します。
▽週末予約の場合でも、第1希望、第2希望、キャンセル待ちなどの機能を予約システムに付けさえすれば、予約の効率化が図れ、無駄のない予約ができるはずです。
▽一軒や二軒が取り組んでもだめ。結局は、こういうアイディアを具現化する横断的ビジネスが生まれることを待たねばならないのです。
▽旅館料理の量を少なくするためには、季節の平準化を目指すビジネスが生まれることが必要。(現在の宿泊予約サイトなどはまさに逆行していますが)できぬなら、やってしまおうホトトギス、ですね。

井門さんは「泊食分離」についても記事を書いていますので、興味ある方は引き続きお読みください。

さて、ここからは私の考えです…(^^ゞ

旅館業が普通としている「1泊2食」販売は、いわばセット料金的な見方からすると「お得」になっているほど安くなっていることが多いので、「泊食分離」を打ち出しても、お客様には「割高感」が出てしまうことから実績が伴わないもの現実なんですね…。

井門さんが指摘されるように、自分の施設を選んでもらうための営業的な理由で(特に旅行代理店)、料理写真から量を多く維持する傾向を変えていくには判断が難しいことも大きいです。

ただ、「明朗化」という意味では、利用するサービス内容を分離した料金表示が望ましいので、「宿泊+夕食+朝食」=「総額」を見積表示して、その選択が「1泊朝食付」「1泊2食付」であればセット料金として割引率に応じた料金が提示されれば、業界としては先進的な予約システムになると考えます。

夕食は、季節、食材テーマ、食事スタイル(バイキング、個室)、予算などによって、お好みを選んでいただけば、上記システムに簡単に足し算として組み込むことができるでしょう。

井門さんが指摘する課題の「季節・曜日の需要の平準化」ですが、これは「年中同一料金」体系、もしくは「早割」「連泊割」などで対応できるかどうかは、実績を分析する中での判断となりそうです。

とは言え、サゴーグループ舘山寺サゴーロイヤルホテルでは、「早割」「連泊割」「追加オプション」は予約システムに導入していますので、特に夏休み家族旅行プランでは効果が大きいと実感しています。

サゴーロイヤル

このような見積機能を導入してから、ネット経由での予約数も年々伸びていますし、「一泊朝食付」プランの販売により、「食事は必要ない」という方にも気楽にご利用いただけるようになっていますが、先に述べたような「泊食分離」の表示については、今後の検討課題としています。

また、ホテル山喜では、「年中同一料金(2名様でも1泊2食一万円以下)」コンセプトを導入して、「食事なし」「布団敷きセルフサービス」で割引していく方式を採用しています。

ホテル山喜

こうした試みは、お客様の好みの傾向が一気に変化するというより、多面的と捉えた方に対応している仕組みです。

言いかえると、「1泊2食」で予約した方が楽と思われるお客様、余計なサービスは必要ないからその分を安くしたいというお客様、「追加オプションがあれば料理や観光地の手配もしたい」というお客様がいたりと、あらゆる希望を満たしながら、お客様の旅行可能な日がいつであっても一定したしたサービスを提供できることを目指しています。