地元の食材を地元で消費する「地産地消」や、地域の産業を掘り起こして工場見学を積極的に開放していく「産業観光」などは「地域ブランド」を確立する方策の流れです。

それは大量生産・大量消費の高度成長経済を過ごしてきた日本の観光の姿に一石を投じる大きな動きでもあります。つまり、どこの観光地に行っても同じ料理が出てきたり、行くことが目的化してしまうほどの豪華な(過剰投資した)施設が次々と建設されたり、テーマパークなどの一過性のイベントに振り回されて持続可能な観光振興をしてこなかった状況からの脱却とも言えます。

しかし、その状況を打破して、それぞれの地域の特性を活かそうと努力をしていますが、その全ての観光地が成果を上げているわけではありません。これは「企業ブランド」とも共通する点があります。

いま浜松市でも「浜松ブランド」創出ということで取り組みをしていますし、浜名湖でも「浜名湖えんため」が「遠州灘天然とらふぐ」を売り出して3年目を迎えます。

浜松や浜名湖のイメージを意識しつつ、なにより地域の人たちがどのようなイメージを訪れる人たちに持ってもらいたいのかということを明確にしないといけないということ、また施設、サービス、料理、周辺観光地など全てのベクトルが合わさらないと持続可能にならないという自覚が不可欠ということ、そしてその取り組みの成果の確認を地域で行い改善を続けることがスパイラルアップへの道であると思います。


■観光経済新聞(2004年12月18日)
 これまで国内旅行の抱える課題を概観してきた。そうした課題解決の一つとして、地域ブランドの構築について記していきたい。
 その地域に旅行したいと思う気持ち(旅行意向度)は、その地域の名前を知っているか(認知度)という割合に比例することが、岐阜県の調査からよくわかる。飛騨高山や下呂温泉のように認知度が高い地域は、訪問したいという意向が高く相関関係が認められる。一方、岐阜県は認知度が最も高いにも関わらず旅行意向度は低い。ここに「地域ブランド」の価値がある。
 ブランドには他の商品(地域)との識別をする機能があるだけでなく、ある程度のベネフィットを提供し続けるという地域の意思表示と、そのベネフィットの質を維持するとうい約束を表す品質保証の機能がある。旅行におけるベネフィットとは、旅行者の目的の満足に他ならない。旅行に行く目的は大きく3つに分けられる。すなわち、/歓箸離螢侫譽奪轡絖家族とのふれあい・友人との付き合い9ゴ饋粥Ω上心−である。岐阜市の場合にはそこへ旅行しても、どのような目的が満たされるか旅行者に伝わっていないために、知名度が高くても旅行意向度が高まらないと考えられる。
 また、ブランド化はそれ自身が独自の価値を持つ。1985年、アメリカのコカコーラ社は19万人の消費者味覚テストをもとに、新しい味のコーラ『ニューコーク』を導入したものの、実際の消費者の評価は反対で、1日8千本の抗議の電話が殺到し、元の味に戻すための集団訴訟が起きるなどの社会現象まで巻き起こし、新コーラのコカコーラ・ブランドは、コカコーラ社にとって重要な財産であると同時に、消費者の心の財産であり、その価値は消費者の生活や歴史や人生の意味さえ持つものとなっていた(石井淳蔵「ブランド−価値の創造−岩波新書参照)。ブランドが顧客との心理的、精神的な絆の重要性を示すものであると同時に、ブランドの資産とは顧客の心の中にあるということを教示したものといえよう。
 地域ブランドとは、旅行市場において紹介される観光地を買い手である消費者が、そこに行けば自らが求める目的を満足させることができると認識することで、消費者の認識のあり方そのものがブランドであるといえる。
(JTBコミュニケーション事業部長、神戸国際大学非常勤講師 高橋一夫)